開高健「新しい天体」

昨日の宴会の帰りに、本屋に寄ったら文庫版が出てたので早速購入。高校時代に図書館で借りて読んだけど、文庫出るの待ってたのよね。
大兄お得意の食い物に関わるお話なんだけど、いやまぁその、美味そうなこと夥しい。読んでて腹が減ること腹が減ること。
元々、氏の本を読み始めたのはご多分に漏れず中学時代に流行った「オーパ!」なんだけど、本編の釣りの記事にはさほど興味が無くて、
もっぱら谷口教授達が奮闘する料理の方に生唾飲んでたってのが食い意地はった男の子。
んでそっから古本屋で見つけて、夜寝る前にベッドの中で読み始めたのが「地球はグラスのふちをまわる」
「新しい天体」の解説にも出てたけど、これの「越前がに」って話がもう。これが。なんともはや。たまらんですな。
凄惨なほどの冬の日本海の描写と、臨場感あふれるその筆致に、寒気を覚えて布団に潜り込んで震えながら「あぁ、蟹が食いてぇ!」
って貴方、8月の蒸し暑い真夜中にですよ。寒気と飢餓感で、朝まで眠れませんでしたよ。
それがちょっとトラウマみたくなって、その後そのページだけは封印しました。だって何度読み返しても寒気と飢餓感(蟹限定)が。
昨日の蟹宴会の最中、そんなことをふと思い出したりしていたのでした。


氏の作品で、他にも布団の中でガタガタ震えながら読んだ作品があります。
恐ろしくて目を背けたいんだけども、背骨を掴まれてひきつけられるような、精神と目を盗まれて自分の制御下におけないような、
そんなスゴイ小説でした。それ以来、どんな大作のベトナム戦争モノの映画を見ても、どこかのめりこめないってのがあります。
「輝ける闇」、未読の方は人生大損してると言っちゃいますぞ、ゼヒ御一読を。